第38回埼玉県写真サロン入賞作品

2021年

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第38回埼玉県写真サロン入賞作品


 応募者数 378名
 応募点数 単写真 751点 組写真 95点 合計 846点

 審査員 大西 みつぐ(写真家)

講評

 昨年中止となった「埼玉県写真サロン」が開催されることは喜ばしいことです。
日本も世界もたいへんな時代に、「写真」は「不要不急」なのか否かを問われるかもしれませんが、心の荒廃がやがてさらなる取り返しのできない時代を生んでしまわぬよう、私たちは常にカメラを通して社会を見つめ続けていたいものです。
 今回のご応募いただいた作品、かつての「祭り」など歳時記的な被写体が少なくなっているのはこのコロナ禍の特徴といえましょう。
しかし優秀賞の作品には私たちの暮らしの切実さが滲み出ているものが集まりました。
「上手な写真」を目標にするだけでなく豊かなイメージをさらにそこに育んで欲しいと思います。

最優秀賞

「現役の95才」 高田泰子

 組写真の展開としては距離感など案外おとなしい流れなのですが、人をしっかり写し止め、その個性や生き方までもイメージとして描いている力強い作品です。
弓道場の静寂さと研ぎ澄まされた緊張感に撮り手も一体となっていらっしゃる。
その自然光はとても美しく、被写体である女性の凜とした姿を貫いています。
そこに私たちは神々しいまでの意思の力を感じさせずにはいられません。
カメラのシャッター音さえかき消されています。



朝日新聞社賞

「明日は佳き日」 小島廣司

 私たちはこれまでこうした情景を普通のものとして見過ごしていたと思います。
あるいは一つの典型、富士山に桜。
しかし、今こんなにも穏やかな風景として眼に映るのはこのコロナ禍という状況がそうさせるのでしょう。
それもまた「写真と時代」が自然に関わること。
この作品はさらに中央をちょっと外して若い男女が寄り添っています。
それは永遠の「佳き日」なのです。
二人にとってだけでなく、私たち写真を見るすべての人にとって。



全日写連賞

「大地の歌」 丸山かおる

 田植風景が特別めずらししいものでなく、これも普遍的な「題材」なのですが、人物が大きな木(桜か?)の影に入っているという設定、あるいはシンメトリックな構図が秀でています。
そこには自然とともに、この木に育まれ暮らし、農業を営んできた人間の歴史、時間軸をも想像させます。
そしてそれはこの先も続くという 力強いメッセージにもなっています。
カメラ位置、タイミングだけでなく、本質的なテーマとしての見極めがあります。



審査員特別賞

「大仕事」 樋口晴彦

 巣作りでしょうか。
健気に動く鳥の「生」をしっかり写し込んでいます。
透過光で見える羽なども美しく、背景の丸いボケとうまく共演していますし、くちばしで引っ張るわずかな「糸」が繊細な描写となりタイトルイメージにうまく重なります。
鳥類の撮影は図鑑のように 中央にそれを写し止めることが目的としてしまうこともしばしばですが、こうした一挙一動にテーマを見つけてみることで、作品としての輝きを見出していけると思います。



関東本部委員長賞

「翻る」 稲留雄一

 単刀直入な写真ですが、しっかりと「真正面」で捉えていることの力強さが全体を良い方向に導いています。
それは被写体である子どもに向き合う基本の一つかもしれません。しかも、本当にまさに翔るが如く、高速シャッタースピードで一瞬のものとして捉えられました。
それもこれも右手に持っている網があっての世界。
さらに背景の彼岸花の群れという色彩として似合いすぎるまでの取り合わせ。
ポツンと写る人物の後ろ姿も効いています。



埼玉県本部長賞

「ソロキャンプ」 中野正子

 ソロキャンプは今流行っているようです。
ちょっと寂しそうに思えますが、自分の意思と責任で大地と一体となって時間を経験します。
このコロナ禍でますます自分を見つめる時間が続くことを考えますと、これもまた今の時代を表現している写真といえましょう。
たなびく調理のための煙が効果的です。
彼の献立を想像してしまいます。
作者もきっと興味があったでしょうが、「ソーシャルディスタンス」での一枚が気持ちを共有しています。



埼玉県本部委員長賞

「収穫」 高橋洋司

 ミレーが1857年に描いた絵画「落穂ひろい」を彷彿とさせるものがあります。
絵画の方は穏やかな色調でしたが、こちらは案外強いコントラストです。
畑の作物さえよく見えてこないのですが、ただ一つ、ご婦人の皆さんが黙々と作業されているイメージはこのことでかえって高まっています。
それはまさに「落穂ひろい」の3人が屈んでいるポーズにつながります。
つまり「空間」だけでなく「時間」もそこに描かれているということなのです。



優秀賞

「冬寒」 岡部美智子


 第一印象は雑然とした配置などが今ひとつに思えました。
ずっと見ていますと古典的なモノクロプリントに見えて面白くなってきました。
ある種の「モダニズム」といえそうです。
「冬寒」というタイトルもまたその印象を天と地で二分する構図の選択へとつながり、タイヤらしきオブジェを堂々と手前に置くという方向に至ったのかもしれません。
そうした造形感覚はとても大事だと思います。
新たな風景写真の地平を切り開いてください。




「昭和酒場通り」 新井久夫

 演歌のようなタイトルがいいですね。
この店は素敵です。
酒屋さんなのか居酒屋なのか。
どうでもいいけど酒を飲める! この年代物の看板そのものが味わい深く、店主やお客さんの会話など聴いてみたくなります。
ご時世でいえば酒の提供も難しく、つい左の二人の視線を気にせずにはいられなくなりますが、中央の「あま酒」を呑んでいるんだよと、右側のおじさんにいわれてしまいまそう。
全体を堂々と見せたスナップショットの面白さです。




「舞」 大島斎礼


 こうした写真は高速シャッターで写し止めるだけが作品ということでもありません。
ではブレていてもよいのかというと、正確にいえば一部が効果的にブレていることでその繊細な「動き」が綺麗に表現されるといってよいでしょう。
難しい人物との角度がありながら、軸としてブレない「直立」で手の細かな動きを伝えています。
いわば「静と動」が同時に表現されているものです。
適切なシャツタースピードとタイミングの選択でした。



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