講評 熊切 圭介(写真家)
埼玉県知事賞 「あと・7m」 菊池 博子
かなり長い距離を歩いてきたのだろう、子供をかろうじて腰で支え、右手には重そうな荷物を持った母親の、疲れ果てた様子がリアルに描写されている。背後の街やシルエットの人物の姿など、この場所の状景が巧みに写しこまれている。タイトルが面白い。
全日写連関東本部長賞 「都市空間」 松澤 江津子
ビルの壁面の映り込みを、シャープなイメージで構成している。青空の日を選んで撮影した事で、都市のイメージが強調されている。画面右側の空に、タイミングよく飛行機を写しこむことで、スケール感と動きを表現している。
朝日新聞さいたま総局長賞 「朝日と共に」 内山 和也
早朝の浜辺で働く人の姿を、シルエットを生かして表現力豊かに撮影している。朝焼けの空をバックにした3人の人物の動きをよく計算して、巧みに捉えている。カゴからこぼれ落ちた水が、画面に変化を与え効果的だ。
全日写連埼玉県本部長賞 「ポーズ」 斎藤 啓助
大木の洞に営巣しているフクロウが、片手(足?)をちょこんと上げている姿が可愛らしい、樹の緑が美しく、画面から爽やかな空気感といったものを感じる。フクロウの僅かな動きを捉えたシャッターチャンスが秀逸だ。
全日写連埼玉県本部委員長賞 「マリちゃんといつも一緒」 田沼 清明
桜が美しく咲いている公園の一隅で、可愛らしい人形・マリちゃんと一緒に写っている老夫婦の姿が微笑ましい。とてもヒューマンなイメージの作品で、この光景から高齢化社会の今の日本の姿が伝わってくる。
さいたま市長賞 「オイラの住み家」 保科 幸裕
青い水の泡が、そのまま固まったような珊瑚礁が面白い。その珊瑚礁を住み家にしている赤い魚を、タイミングよく撮影してるので、色彩と形の面白さがよくでている。やや斜めの角度で撮影しているので、立体感が強調されている。
埼玉県議会議長賞 「自由」 前田 稔
政治的なメッセージが伝わってくるユニークな作品だ。旧社会主義圏で撮影したのだろうか、『自由』を希求する人達の深い想いが、壁画を通して伝わってくる。4枚の組み写真として構成も巧みなので、訴求力の強い作品だ。
埼玉県教育長賞 「ゼラニュウム・花も終わって」 森下 裕
美しく咲いたゼラニュウムも、今や枯れてしまっている。その後に繊毛のある遊走胞子が残り、次の生命につなごうとしている。渦を巻いているような遊走胞子に造形的な美しさがある。自然を細やかに観察した成果だ。
さいたま市議会議長賞 「にわか雨」 渋江 ふみ子
突然降り出した雨。若い女性二人が、慌ててスカーフを被り、道を急いでいく姿に、都会的な情感がある。オレンジ色の外燈が雨に煙って、一層この場の雰囲気を強めている。咄嗟のスナップにもかかわらず、見事に情景を捉えている。
さいたま市教育長賞 「視線」 近藤 扇次郎
一瞬たじろぐような、インパクトの強い作品だ。両手の間からじっとこちらを睨みつけている猿の表情に、ある強い意志のようなものを感じる。真正面から、猿の目線と同じ高さから撮影しているので、迫力が有る。
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