最優秀賞
「観覧席」 黒須建治
青空と赤いバイクのコントラストが目を引く力強い作品です。観覧席の段をうまく利用して、段違いの高さにいる観客と競技中のバイクをひとつの画面に収めるという発想がユニークで構成力も見事です。加工によるものですがさもありなん、と思わせる仕上がりに驚きました。鉄板の影が模様となってスカートやズボンに投影されたのもいいアクセントですね。(榎並)
朝日新聞社賞
「月の散歩道」 吉村洋
冠雪した富士山の上を月が通り過ぎるところを、比較明合成で面白く表現しました。雪の量、天候、月の高さなどすべてが完璧にそろいました。露出も的確で、湖畔の明かりが美しく、濃紺の空が引き締まり、流れる雲がアクセントになっています。(山口)
全日写連賞
「迷宮への入り口」 平田佐和子
見上げる時計、長い路地、見下ろすらせん階段。視点が上下に移動する写真3枚を組んで、時空を超えていくような心象風景を表現しました。周辺を落としたセピア調のプリントも、作品のテーマによく合っていて、しっとりとしています。(山口)
第40回記念賞
「ミラーが語る」 阿部立子
ツル性の植物の面白い曲線をとらえつつ、背景にピンクの花を置き、水滴にその花を映し込んだ点。さらにはミラーを使ってシンメトリーで表現するという、コンセプトのしっかりした作品です。光条はフィルターによるものかもしれませんが、光のとらえ方が素晴らしく色鮮やかでエネルギッシュな作品です。部屋に飾って鑑賞したくなりました。(榎並)
関東本部委員長賞
「旅立」 沖舘宏
枯れた花の綿毛が飛んでいくところを、思い切りの良いフレーミングでとらえました。暗い背景に白い綿毛がくっきりと浮かび上がっています。スロー気味のシャッターで花がらがわずかにブレて、旅立ち感がよく表現されています。(山口)
埼玉県本部長賞
「黄昏れる微笑み」 田沼清昭
何げない日常の中で、ふと気づいた幸せなひとときや安心感といったものを作者は丹念にカメラに納めていると思います。3枚組みですが、1枚目の赤いバラとシーツ、2枚目の西日の当たる郵便受け、3枚目の塀に貼られたポスター。どれも人は写っていませんが気配が感じられます。黄昏(たそがれ)時の光と空気、こんな微笑(ほほえ)みの時間で締めくくれるといいですね。(榎並)
埼玉県本部委員長賞
「諍い」 吉野平治
繁殖期の争いだということですが、鋭い嘴(くちばし)の突きと大きな足の蹴りが決まった瞬間を、タイミングよくとらえました。動きが激しい対象ですがピントも露出もよく合っていて、半逆光ぎみの光で逆立った羽の隅々まで立体的に写りました。(山口)
優秀賞
「安寧の祈り」 山﨑光隆
鋭い顔をしたキツネの化身があたかも森の中から現れ出(い)でたようなインパクトの強い作品です。光芒(こうぼう)やススキ、神使であるキツネ像など、幾つもの要素を優れた技術で配置しています。それぞれの色味やシャープなピント。作者がイメージする内容が、的確に表現されていると思いました。(榎並) 「風の道」 宮岡俊一
強い風に吹き飛ばされて、中央のヒマワリは丸はだか。ほかの花も花びらが真横を向いています。コントラストをつけたモノクロプリントで、ストレートに動きが伝わってきます。背景の雲も流れるような表現で、動感たっぷりです。(山口) 「斜陽」 田林勲
強いコントラストがこの作品の魅力を高めています。斜光線にメタリックな観覧車が浮かび上がり、ひときわ輝きを放っています。空を黄金色に染める雲の存在も大きいでしょう。観覧車のカゴの一つ一つにドラマがあるように、周辺のマンションの窓一つ一つにも営みがある、作者はそういうことを描きたかったのではないでしょうか。(榎並)
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