講評 大西 みつぐ(写真家)
埼玉県知事賞(ニコン賞) 「山里の姉妹」 田村 真由美
私たちの暮らしぶりを率直に伝える写真はなによりも大事です。この組写真も丁寧な撮影に加え、的確な構成力で写真を見る私たちに「歳月」の深みと風土への愛情、そしてお二人をとりまく日常をしっかり伝えています。落ち着いたトーンで揃えたプリントワークも秀逸です。
全日写連関東本部長賞(アサヒカメラ賞) 「夕照」 小池 正臣
ひとつの「完成形」といえる風景写真。撮影からプリントまで、一貫した作者の創作にこだわる姿勢を感じさせます。夕陽の輝き、海鳥の点在、岩肌の質感など、フレーミング、シャッター速度といった基本を忠実に組み合わせる努力の積み重ねが美しい一枚に結集しています。
朝日新聞さいたま総局長賞 「天使の方舟」 新井 久夫
一見しますと不思議な写真ですが、反映像をうまく利用したスナップショット。勝鬨橋が新鮮な水辺空間に思えてきました。まさに「方舟」に乗った未来への宝物。お子さんたちの成長とともに、こんな日々の安泰を祈りたいものです。
全日写連埼玉県本部長賞 「鎮魂」 樋口 逸見
何の説明もない組写真ではありますが、タイトルに左右されず、過ぎ去りし記憶の由縁を確かめてみたくなります。特異な色彩で合わせたこともあり、それぞれがオブジェとしての存在感を表しています。被写体に向き合う真摯な姿勢です。
全日写連埼玉県本部委員長賞 「ペアーダンス」 若井 良広
羽を広げたのは求愛活動なのか? 透過光のそれはより美しく輝いています。ここで快心のシャッターを押せたことの至福。鳥撮影の醍醐味とはこんな瞬間ということでしょう。レンズワークと 露出の勘所が冴えています。
さいたま市長賞 「叫び」 小久保 敦央
定番の被写体「泥んこ」。まだまだ表現のチャンスはあるということでしょうか。横顔を大胆に切り取っています。泥だけですと、ちょっと怖い写真になってしまうところ。ピンク色の舌とつぶらな瞳が人間味を感じさせます。
埼玉県議会議長賞 「挑戦」 富田 貞男
ひたむきに苗を植える女の子の姿が可愛く、ローアングルで捉えたところの必然を感じさせます。ただし、ちょっぴりプリントとしては「硬い」です。こうした被写体はやはり柔らかな描写を心がけられるとよいでしょう。
埼玉県教育長賞 「牧民の朝」 森口 菊枝
とても美しい、夢の中にでも出てきそうな風景です。横長のプリントにしたのも効果的でした。左右2頭の馬の配置が偶然であるとしたら、すでにここで絵になっていたということでしょう。ハイライト部のトーンがもう少し出てくるとよいでしょう。
さいたま市議会議長賞 「生涯現役」 小林 千津子
何故に上半身裸なのか? 西日に輝くおじいさんの笑いはなにを意味するのか? いくつか謎の残るスナップショット。確かにタイトルのようなイメージは浮かびますが、写真を見る人にそれを委ねるという本質に迫るユニークな作品。
さいたま市教育長賞 「通学路」 宇田 博之
ほぼ定点観測による「通学路」。ここを歩く学生さんたちの心としっかり結びつくような風景写真とも思えます。撮影には粘りも必要でしょうし、この4枚を想像しながらシャッターを押す楽しみもあったでしょう。人生、努力が肝心です!
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