講評 芳賀 健二(ニコンイメージングジャパン)
「夕闇のスライダー」 長浜 晴生
この場所の作品は、度々見ますが、撮影された時間帯が絶妙です。暮れ行く明るさと空の色付きがとてもいい雰囲気をかもし出しています。
スローシャッターでの舟の光跡がピリッと効いていますし、画面に動感というスパイスを加えてくれています。
「ローカル」 渡辺 道雄
昔なつかしい光景を3枚組で上手にまとめています。ローカル線の雰囲気を鉄路と子供、車輌、そしておばあちやんで組んだことで、視点の良さと被写体までの距離感が良かったと思います。3枚目のタバコをすっているおばあちやんのカットの存在感があります。
「たそがれ」 龍澤 豊文
夕暮れの静寂さを感じます。風の止んだ一瞬を望遠レンズの適確なフレーミングで切り取っています。夕焼けの色調、夕日と白サギのバランス。計算したようなサロン調の秀作です。
「止まった刻」 小林 千津子
いろいろな事を想像させ、考えさせる面白さがあります。見る人によって見方がいろいろ広がります。4枚それぞれに光と陰の存在を感じます。3枚目のカットは最期でも良かったかもしれません。
「怒れる入道」 又賀 義信
この1枚で自然の妙を感じます。その瞬間を逃さなかった又賀さんの感性が良かったのでしょう。自転車だけでなく、人物のシルエットでも入るともっと上位になった作品だと思います。自然のスケールの前では、人のなんと小さい存在でしょう。
「今昔物語」 中野 芳之
組み写真でも2枚というのは難しいと思います。C字形の線路の曲線を生かして、新旧の対比を見せた発想、表現力が成功した作品です。
「水玉ポルカ」 戸塚 宜子
接写、クローズアップの面白さ、新鮮さを感じさせてくれます。主役はややグロテスクなのですが、水玉、光、色調が目を引く1枚になっています。
「突然の雨」 坂本 典子
まさにタイトルにぴったり合った作品です。傘など差さない姿と衣装がステキですし、背景、色合い、英語の文字の組み合わせは、とても日本では出会えない一瞬を切り取っています。人、雨、場所、すべて含めたシャッターチャンスが絶妙です。
「霞ヶ浦夕景」 小野 正昭
特に風景は、この時間帯での撮影がいい作品の出来る確率が高くなります。色付きがいいですし、ヨシや白サギの大きさやバランスが絶妙です。水面に少しグラデーションがついていれば、より上位に入ったかもしれません。
「花しずく」 熊代 惠子
水滴に写り込んだいる花の様子を、ここまでシャープに写すためには、カメラの位置、使うレンズなど、充分計算しないと出来なかった作品でしょう。華やかな黄色の花を選ばれたのも正解でした。
講評 小野崎 徹(全日本写真連盟関東本部委員)
「雪の青い池」 中野 正芳
北海道・美瑛町「青い池」の冬季ライトアップ。有名撮影スポットは多くの作品が発表され既視感がありますが、上部の白く流れる雪の描写が美しく、無数の流れ星のようです。中央の暗い部分が幻想的な効果をあげています。
「水辺の少女」 星野 光典
カメラを睨めつけるような少女の眼差し。楽しく遊んでいるようにもみえません。後ろに2人の人物を配したことで奥行きが出て力強い構図になり、少女の緊張感が強調されています。
「夢をつなぐ」 吉田 信正
81歳の今も活躍するC57形蒸気機関車1号機。この機関車を動態保存するために努力する人たちにスポットを当てて構成し、「貴婦人」と呼ばれるSLの魅力を伝えています。タイトルにも作者の思いが込められているようです。
「出番前」 大澤 秋良
髪に櫛を入れてもらいながら舞台をのぞき見しているのだろうか。キラリとした目の光に自信がうかがえます。赤いのれんの開き具合、櫛を持つ大人の手。シンプルな構図で少女の余裕と期待を表現しています。
「湖面を染めて」 齊藤 昭雄
映り込みなのにどこから水面なのか判然としない。鏡の上に樹々を置いたように見え不思議な感覚に襲われます。「明鏡止水」という熟語をイメージ化したような印象です。静かですが、山の黒い影がぐっと画面を引きしめています。
「時代に揺らぐ都市」 伊佐 勝男
移転が近い築地市場を中心に時代に翻弄される都市の姿を捉えています。暗い色調の中に虹色に染まる都市群像。作者が「揺らぐ都市」の中に希望を見出そうとしているように感じます。
「突風」 小松崎 武美
画面いっぱいに広がる花びらがすごい迫力。待ち構えていてもなかなか撮れない瞬間。興奮する少年の気持ちが伝わってきます。桜の名所でもない普通の街角のスナップ写真ですが、ワクワクする気持ちになります。
「めざめ」 神本 文子
暗い斜面に尾根越しの太陽がスポットライトのように光を届け、そこだけが生命を取り戻したように輝く一瞬。光と影が創る神秘的な光景を見事に切り取っています。
「3兄弟」 宇田 博之
よく出来た絵本を見るような構成です。定点観測しているカメラの前でポーズをとる「3兄弟」。1羽から3羽まで揃うストーリ性があり、作者と「3兄弟」が心を通わせている楽しい作品です。
「心躍る、水躍る」 谷村 愛子
東京・深川の水かけ祭り。カメラマンに人気ですが、人出が多く、水を掛けられるので撮影は大変です。制約の多い中、神輿に迫り、祭りの象徴とも言える水の勢いをよくとらえています。周りのビルを入れて都会の祭りを表現しています。
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