最優秀賞
【最優秀賞】「追憶」岡部 美智子 砂浜でしょうか?多くの人は見向きもしない足元の枯葉などを作者の感性によって4つの宇宙空間が宝石のように青白く輝いています。あえて画調を暗く落とし、主題を暗闇から浮き上がらせた手法も秀逸で、これらの作品を目にすることで、既存の価値観では気付かない、貴重で新たな体験を私たちに示してくれました。
朝日新聞社賞
【朝日新聞社賞】「化身」小林 伸一 写真の持つ細密な描写力を活用して世界をどのように表現するか、更に画調の仕上げ方など作者によって見事にコントロールされています。画面中央で輝く眼差しはドラマを盛り上げるに相応しい選択で、怪しく曲げ伸びる首と風に揺れ動く白い乱れ羽は何者かに化身する前兆のようでもあり、目が離せません。
全日写連賞
【全日写連賞】「斜陽の刻」入江 一男 黄昏時の都会の一角で人影が佇んでいます。人影は具体的な動作はなく、ただ静かにこの 時間と空間に溶けていってしまいそうです。濁色をメインにした彩色や人影を無機質な瞬間に写し止めた構成などから作者の詩的な感性が感じられ、毎日訪れるこの時間の気怠さを、視覚の世界から心で感じさせる心象映像へと導いています。
関東本部委員長賞
【関東本部委員長賞】「整列」伊藤 春子 作者の発見と行動力の勝利です。面白いと思っても撮影しなければ結果は得られず、しかし作者は面白いと思って撮影という行動に移しました。スリット状のミラーにすっぽりと人を入れたのは作者の手腕の証です。現代は個人の在り様が曖昧な時代と言えますが、複製人間の整列といった、現代を表徴した社会的な映像とも言えます。
優秀賞
【優秀賞①】「おばあちゃんの店」岡部 蝶子 昭和を思わせる店の内外を4枚の過不足のない映像で綴りました。店先で干されている軍手、使い慣れた包丁で野菜を切るシワの深い腕、あまり役に立たない留守番役の猫、昔馴染みと談笑するおばあちゃんの屈託のない笑顔。私たちが既に持っている言葉で全てが説明のつく映像が懐かしくも嬉しく、この笑顔達が末永く続くことを願います。 【優秀賞②】「幸せな時間」平田 佐和子
親子の鋭い視線が我々人間の心を射抜き、人が作り上げた文明という世界を見透かされて いるようでもあります。麻袋にくるまった母親も至福の時に思えますが、その後方でチョコんと顔を出す、青空を反射させた目を持っている子猿が異様です。作者の奥深い眼差しによって、親子関係以上の生命の尊厳まで感じさせる作品です。 【優秀賞③】「朝霧」菊池 ハツエ
霧がもたらす特異な諧調を使い、眼前の世界を3点の私の光景として見事に捉えました。 光芒や遠くに霞む森の影、そして小さな人物の佇む姿など、対象を撮影しているようですが、日頃からの作者の美学が作り上げた私の光景にも思えます。何を美しいと感じるかは人それぞれですが、作者は実直に自身を磨き続けた結果の映像と思います。
【優秀賞④】「宇宙遊泳」柴崎 美恵子
なんの脈絡もなく、突然2本の足が天に向けて立ち現れ、まるで時間が止まっているようにも思えます。その意味も分からず私たちはこの作品を見続けなくてはなりません。周囲に説明物を排除したことも最初からの計算済みだったと思え、写真という固定映像の表現を熟知した作者の感性が光る作品です。
【優秀賞⑤】「波紋」戸津井 直次郎
この美しい波紋が永遠に続くのではないかと錯覚を覚えました。写真という時間を止めた時の映像は私という経験を介して私に届きますが、作者の作成した映像にもかかわらず、目にする者の体内で新たな価値観を持って再生されるところが写真の持つ魅力と言えます。私の中の白鷺は永遠に波紋を作り続けることでしょう。
【優秀賞⑥】「ある街角」後藤 やす子
実像と虚像、また暖色と冷色、更に時間の固定といった写真が作り出す様々な特徴を巧みに使った都会に垣間見る陽炎のような映像に感じました。実態があるようで、すぐに消え失せ何も残らない不安など、今日の世界の断片を思わせます。作者の手腕も見事ながら、作者を超えて偶然に映り込んだ映像から、私たちはいつも学びます。
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