第39回「私がみつけた埼玉の自然」フォトコンテスト
【応募状況】
応募者数: 317名(会員:191名、一般:124 名、高校生:2名)
作品数: 758点(会員:525 点、一般:228 点、高校生:5点)
審査委員 鈴木 一雄
【総評】
「東京に隣接する埼玉県に、これほど美しく豊かな自然がある」というのが、審査を終えての率直な感想だ。私は自然写真家として、埼玉県の各地を何度も訪れて撮影してきたが、それでもまだ見ぬ光景が応募作品にたくさんあった。今回の入選作品が写真展に展示されると、訪れる方々は、埼玉県の自然の素晴らしさに驚くことであろう。
全体を通しての感想としては、自然風景の景観作品以上に鳥類を中心とした生き物の作品が多かったと感じた。実際の作品数は過半数には至らないかもしれないが、迫りくるチカラがそう感じさせていると思う。もちろん、最優秀の桜や特選のフジなどの見事な花作品も特筆すべきと感じている。審査を振り返ってひとつアドバイスを述べるならば、マクロ的なアップ作品で終わるよりも、主役(花や鳥、昆虫など)の生活環境を組み入れた内容に昇華させてほしい。そうすることで、“埼玉の自然”というこのフォトコンテストの狙いに応えるものになるからである。
最優秀賞
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「雪の秩父路」 岡部俊夫
一目見た瞬間に、画面に引き込まれた。桜に雪が降り積もり、背景には桜を引き立てるように雲海が湧きあがっているではないか。そして遠方には、残雪の山々が連なっている。実は桜の花はまだ咲いていないということだが、まるで満開に雪が積もっているように見えてくる。これはこれで、実に見事な桜の作品に昇華しているといえよう。咲いていようが、何分咲きであろうが、桜を愛して駆けつけた姿勢が、この秀作を生み出したのである。桜と遠景の山並みとの明暗差も調整されており、作者に、惜しみない賛辞を贈りたい。
優秀賞
「大物ゲット」 戸田利一
卓越した撮影技術と並々ならぬ努力によってとらえられた貴重なシャッターチャンスの映像だ。空飛ぶ漁師と称されるミサゴが大きな川魚を捕まえ、川の上を低空飛行している姿は圧巻である。さらに、羽を広げた美しい飛翔と背景の川の流れにも躍動感が生まれている。生態系に繰り広げられる生死をドラマに、臨場感が強く漂っている。
特選
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「藤」 笠原明
まるで絵画のようなフジの巨樹の画面に、思わずため息がでてしまう。圧倒的な花の美しさは、シンプルな色彩効果と遠近感を巧みに生かした画面構成、そして幹や枝を切り絵のように力強い造形美として配置したことによって生み出されている。作者の審美眼と優れた腕前が結びついて生まれた力作といえる。撮影後の現像の技も秀逸だ。
「白サギのエサ探し」 堀之内 稔
コンバインで稲刈りをしているところを、30羽を超えるシラサギが取り巻いている。彼らは、稲刈りでこぼれ落ちる米を狙っているのだろう。豊かな大地の恵みと豊かな自然の中で暮らすシラサギのほのぼのとした物語が生まれている。このような農業そして鳥たちとの共生が、いつまでも続いてほしいと訴える内容だ。
「野火いまだ消えず」 入倉修平
大自然の織り成す鼓動をとても力強くとらえた力作だ。尾根と谷が交互に遠くまで続く山並みと、その間を埋め尽くす雲海のスケール感に圧倒される。そこに朝日が差し込むドラマチックな朝景色だが、やがて視線ははるか遠くに立ち上る煙に引き付けられる。作品のタイトルを確認することで“野火”と知らされ、この作品の価値はさらに高まった。
「見沼サウルス」 見富昌信
あまりにも異様な光景に圧倒され、そして笑みがこぼれる。巨大な大根であることはすぐに理解できたが、これを怪獣ととらえた作者の視線がいい。広角レンズの遠近感を巧みに活かし、背景を小さくすることで迫力のある大根怪獣が生まれた。豊かな大地からは、巨大なカボチャやこのような大根も育つというものだろう。