第33回埼玉県写真サロン入賞作品

2016年

準特選

2016年 写真サロン

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講評 小泉 洋一(ニコンイメージングジャパン) 

j01.jpg「雨も楽し」 箕田 俊子

 突然のスコールに合った女学生と思われる3人が1本のカラフルな傘に入り、楽しそうな雰囲気で歩いているシーンを、上手く捉えた作品です。サンダル履きから比較的近い移動と思われますが、題名の「雨も楽し」と彼女らの表情がマッチした良い作品です。


j02.jpg「スクランブル」 佐藤 文男

 都会のスクランブル交差点を渡る多くの人々を画面下部にバランスよく配置し、ワイドレンズの特徴を生かし、背景のビルの歪みによる効果や周辺画質の低下も表現にプラスとなった作品です。信号のタイミングに合わせた渡り始めのタイミングも最適で、後姿中心が効いています。


j03.jpg「唖然」 吉田 千恵子

 サルの表情がとても良いシャッタータイミングでした。光線状態もベストで、作者が目の反射に写り込んでいる位のアイポイントの仕上がりでした。サルは何を見ていたのでしょう?左のオレンジ色の写りこみが少し気になりました。


j04.jpg「覗く」 小島 文夫

 水面の上の情景や背景部遠景まで適度の深度で撮影され、主題となる魚の水中の様子が見事に写し出された作品で、水面の上下をまるで水槽の外から撮影した様に見える、面白い作品に仕上がりました、今後も期待します。


j05.jpg「霧の朝」 前田 暉史

 朝霧でしょうか遠景部の森の先端部分が霧の中から出ており、まるで雲の上から見る風景の様で、手前の近景とは対照的です。特に画面右から左方向に走る2輪車の人物が画面のアクセントになり効果的でした。自然風景のタイミングを生かした作品と言えます。


j06.jpg「悲喜こもごも」 大坪 弘人

 海外の撮影と思いますが、何か大きな祭りやイベントの帰りでしょうか、特に列車の屋根に乗る人たちが、撮影者に向かい手を振っています。まだまだアジア地域には鉄道は鈴なりに乗る交通事情があることを感じさせられた、構図的にも良い作品です。


j07.jpg「極みの光」 小山 昇

 4枚構成の組み写真で、直接太陽から当る光、そして窓や塀から差し込んだ間接的光を2枚ずつで構成した作品です。モノトーンに近い作品で、光と影をバランス良く表現出来ています。3枚目の作品が他の3枚に比べやや表現が弱い感じを受けました。


j08.jpg「2つの目」 神立 雅春

 獲物を捕まえた鳥の目そして餌食となった魚の目の両方からこのタイトルとなった様ですが、少し深度に入らず、「ねらい目」などとした方がよかったのでは・・・。シャッターチャンスは非常に素晴らしい作品で、高速シャッターによる瞬間の切り取りに成功しています。


j09.jpg「柄杓の森」 斎藤 昭雄

 不思議な作品です、森の祠に風車が沢山有るのは目にしますが、この様な底の抜けた柄杓を沢山挿して祠の様になった風景は珍しい風景です。特に手前と奥の光源が違い独特の色調表現が出来た所も、効果を強めています。


j10.jpg「百花撩乱」 鈴木 秀吉

 6枚組の花火の組写真ですが、多重露光やスローシャッターの効果が非常に生かされた作品表現がされており、様々な火薬の色が良く表現されている作品です。白や明るいシアン色は露出表現が大変ですが、比較的良く仕上がっています。


 講評 宮崎 文雄(全日本写真連盟関東本部委員)

j11.jpg「故郷は湖底に」 小山 憲一

 この湖の底には沈んだ故郷があるのでしょうか、青いトーンの湖面に白く水面から立ち上がる木々が幻想的で美しい画面ですが、更に手前水面に僅かに上部を出した電柱を取り入れた事で作者の想いが強く反映した作品になっています。


j12.jpg「慈愛」 田村 真由美

 古い家屋の縁先の椅子上の日溜まりにきた愛猫を見つめる老人の眼差しと仕草が慈しみに満ちています。穏やかに時間が流れる日常の昼下がりのひとときの情景を見事に捉え、難しい条件ながらもメリハリがあり美しいプリントです。


j13.jpg「彩りの風」 桜井 百合子

 江戸時代からの染めの技術を更に進化させ自由な発想でデザインされて染められた反物が、風に大きく躍動する瞬間が写しとめられた静と動のダイナミックな画面からは、伝統が継承される明るい将来までもが感じとれてきます。


j14.jpg「山里の娘」 大石 茂

 朝でしょうか、少し重い空気の中を行く女性がポイントになり印象的です。やや霞んだ後方の家々も歩く女性を際立たせるのに効果的で、手前の日陰になった部分によって画面が引き締まりました。空気感の良くでた作品です。


j15.jpg「宙への旅」 吉村 洋

 星の軌跡の作品は多く見ますが、キャンドルとLEDでライトアップされた幻想的な棚田と、空一面の星の軌跡の両方をバランス良く構成された技術力の高い作品です。航空機の軌跡も単調になりがちな画面によい変化をつけています。


j16.jpg「日々」 山下 智子

 ここに暮らしている人達にとっては何気ない日常の生活を写しとめたそれぞれのカットは何れも完成度が高く、組むことによってより鮮明にこの地に生きる人々の日々の積み重ねの確かな証しが画面に現れています。


j17.jpg「監視の目増設」 多湖 義友

 巣のヒナが餌を運んだ親鳥から懸命に餌をもらおうとしている瞬間を絶妙なタイミングで捉えられています。この巣が監視カメラの上に造られているのが時代を反映しユーモアにさえも感じさせてくれます。作者の着眼点に敬服します。


j18.jpg「磯景色」 中山 幸也

 打ち寄せる荒波に浸食され壮大な景観を創っている岩礁の浜辺に赤々と空を染めながら海の彼方に沈む夕日が美しい。露光条件により刻々と変わる風景を的確な判断力でダイナミックな風景作品に仕上げています。


j19.jpg「虹の中を飛ぶ」 益田 穣二

 飛行機からと思われますがブロッケン現象を見事に捉えています。天候、太陽の位置と光線状態、雲と飛行機の距離、座席の位置、窓の透明度など全ての撮影条件が合致した上に作者の瞬間的な判断があって可能となった作品です。


j20.jpg「特等席」 野島 隆雄

 朝の公園でしょうか、落着いた色調で統一された画面は二本の太い木で引締められ、樹々の散在する公園との程よい距離と空気感をもっていて、ベンチは腰を下ろす人の公園を独り占めする特等席の様です。安定した画面の作品です。


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